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?企業内部の課題
企業内部の問題としては、オペレーションのコンサルテーションを受けているところは別として、ホテルなど観光産業における企業内教育のノウハウが乏しく、あるいは未成熟である場合が多い。また中間管理職者等スタッフ部門の育成は重要性が高いという認識はあるが、中小企業の場合には時間的余裕や経済的理由によって実施が困難であり、依然として個人の職人的ノウハウによって行われているところが多い。
?社会的な課題
地域社会全体としては、観光産業への関心や理解が乏しいことなどをあげることができる。これが労働需要側にとっては人材確保の難しさにつながっている。特に新卒者の場合には、助言を与える立場にある父兄等が、観光産業への就職に反対するケースも見受けられ、就学者ばかりでなく、社会全体として観光に対する認識に不充分な点がみられる。
観光産業は外見的には華やかであり活気に満ちているが、当該産業での就労についても事前に充分理解しておく必要がある。就業後にイメージと現実が乖離してやめる場合もある。
?観光行政上の課題
観光産業の育成や研究・教育を支援する行政としては、観光における人材育成を担当する窓口が一本化されていない点があげられる。沖縄県では人材を育成する場合の支援体制として、奨学制度や研修制度があるが、観光を基幹産業のひとつに位置づけている行政としては、不充分な点がみられる。たとえば沖縄県の公的研修制度で、平成4年にハワイ大学観光産業学部の大学院に進学しようとした学生に対し、最終的に年功序列となり他産業から研修に派遣されるなど、人材育成財団等行政側で特に配慮がなかったなどの例をあげることができる。ただし、これらの諸問題について、行政内部では充分理解しており、今後の対応に期待される。
?教育機関の課題
全国的な傾向としては、大学等の高等教育機関において観光学の専門家を教員として確保しにくい状況がある。観光学のプロパーの絶対数が不足していることを背景としているが、教員と教員の卵の関係は、まさに鶏と卵の関係ともいえる。また観光学を体系的に教育する機関が少ないことがあげられる。国際的にも日本における観光教育は、発展途上段階であり、4年制の大学は4校のみ(平成8年度)となっている。立教大学観光学科が学部に昇格するなど、大きな動きが出はじめており、今後の観光教育の充実に期待される。
さらに企業での実習制度が未成熱であり、専門学校、大学とも企業実習とアルバイトの区別が付けにくい等の問題がある。

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図1−1 沖縄における人材育成問題の構造

 

 

 

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